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「宮古島のおじ様2人との出会い」  沢 杏さん 東京都 2001.9/21〜25
宮古島を初めて訪れたきっかけは、1999年9月に竹富島で偶然知り合った宮古島のおじ様2人組の力説。
「宮古の海を見ないで沖縄を見たと言わないで欲しいな!」
すごい自信である。

もともと私は宮古島には興味があったんです。大学時代の「社会調査」という一般教養の講義中、先生が宮古島の「オトーリ」について話してくれた時には「おもしろそー」と思ったし、なんとなくお伽噺を聞いているような不思議な感覚にもなり、そのとき感じた「行けそうで行けない土地」への憧れを抱いたのを覚えています。


大学を卒業して社会人になってからは、ひょんなことからトンガ王国に強烈に惹かれ、ポリネシアについて調べたり、実際に1ヶ月間トンガ王国に滞在したりもしました。自然に「島文化」には関心を持つようになりましたし、中でも宮古島は「日本の中のポリネシア」との印象を(勝手に)持っていたので、「いつかは必ず行きたい!」と思っていたところだったんです。


宮古島のおじ様たちと泡盛を飲みながら、そんな話をしていると、私の説得では一度も首を縦に振ってくれなかった主人も、だんだん宮古島行きに心が動かされた様子。
そしてついに!
昨年のゴールデンウィークに念願の宮古島旅行が実現したんです。


宮古島に着いた私たち夫婦を、おじ様方は仕事仲間とバーベキューで歓迎してくれました。
この時、本場宮古島でのオトーリの洗礼を受けました。
実は、主人がおじ様方と会う前まで宮古島旅行を渋っていた理由はこのオトーリの存在。

恐ろしく飲まされると聞いていたので尻込みしていたのです。
主人が飲みすぎてどうなるか想像がつかなかったので、私は気を引き締め、自分だけでも飲みすぎないようセーブしていました。女性だし、みなさん控えめに注いでくれましたが、「あ、もう、その位で、、、」という私のセリフに「少しでいい時には、ぴっちゃがま、って言えば良い」とおじ様方が教えてくれました。
ぴっちゃがま。
そう、私が最初に覚えた宮古の言葉は「ぴっちゃがま」。
なんか可愛い響き。
気に入って何度も使っちゃいました。


今年も9月21日(金)から25日(火)の日程で、1年4ヶ月ぶり、2回目の宮古島旅行をしました。
前回もその美しさに溜息が出ましたが、前浜ビーチは何度見てもキレイですね。
来間大橋も近くに見え、景色としても面白いです。白い砂浜は眩しくて目を開けていられません。
主人はオリオンビールでのんびり。私はひたすら海に浸って(泳ぐのではない)チャプチャプ。


初日の夜は、おじ様方と居酒屋へ。
4人がけのちょうど良い席がなかったので、10人ほど座れる広い座敷に案内されました。

5分ほどして、男性3人組の観光客が相席。
東京から来た私たちにとっては別段不思議なことでもないんですが、おじ様方人は「逆の立場だったら、絶対に有り得ない。先に人がいるところに相席なんて言われたら、100%帰るよ」と言い切りました。
確かに従業員がものすごく気を使ったので、「何でそんなに気にするのかな?」と疑問には思っていたんですが、なるほど、宮古では普通、相席は有り得ないんですね。常に人であふれ返っている東京との違いを一つ見つけた気がしました。

それよりも驚いたのは、最初から水で薄めてある泡盛の一升瓶。これが歴とした商品。
「薄めてあるコレね、飲み屋だからあるのさ」と説明するおじ様。
いくら飲み屋だからって、、、。多分、最初から水で薄めてある泡盛が売られているなんて、宮古独特ではないでしょうか? 
氷がたっぷり入ったピッチャーに、たっぷんたっぷん一升瓶の泡盛を注ぐ。その豪快さ。一々水で薄める手間も省けるし、合理的。さすがオトーリの島、宮古島。恐れ入りました。

飲んでいる席で、おじ様に「オヤケアカハチ」について聞いてみました。
1500年に琉球王朝に反旗を翻した石垣島大浜出身のオヤケアカハチは、宮古島の仲宗根豊見親に討伐された歴史上の人物で、沖縄では知らない人はいないんじゃないかというほどの人物ですが、本土に住む私が知ったのは、ごくごく最近。

しかもオヤケアカハチが韓国の小説に出てくる「洪吉童」と同一人物ではないかという説がある、と聞いて初めて知ったのです。
沖縄の歴史に名を残したオヤケアカハチについて、本土の人間はまったくといって良いほど知らないと思います。
日本史に組み込まれる以前の琉球の歴史も、本土でもっと広く取り上げられたらいいのに、と感じました。

八重山諸島や宮古諸島が好きだと自負していた私ですが、オヤケアカハチの存在は、そんな私に「何も知らないくせに〜」と強烈なパンチを食らわせたとでも言いましょうか。これを機に、沖縄についてもっと知ろう! と決心するに至りました。


今回の宮古の旅の目的の一つは、「伊良部島と下地島に渡ること」。
前回「通り池を見る」という目的が果たせなかったので、今回は絶対に見逃してはならんと固く心に誓っていたのです。
旅行2日目は、初日に飲みすぎたせいか、ほとんど寝て過ごしちゃいました。(無念)

3日目、9月23日。
念願だった伊良部島へ渡りました。通り池の深い青色を眺めた後、渡口の浜へ。

ほとんどプライベートビーチ状態でした! なんて贅沢なんでしょう。
穏やかな海に、白いパウダーサンド。足が気持ちよいこと気持ちよいこと。なぜかゲラゲラと笑い出したくなります。童心に返って砂まみれになって遊びました。
その後、昼食を食べようと、白鳥崎方面へ車を走らせましたが、その近辺に食堂があるのかどうかも未確認でしたし、あまりにもお腹が空いていたので途中で港方面へ引き返してきました。その間の収穫といえば、道路沿いに見かけた見慣れない動物。

「なんだろう? イタチ? ネズミ? 異常に足が短くない? 顔は可愛いよ」
このヘンな動物に興奮。後からそれはマングースだと知りました。
想像していたものよりも小さく、とても獰猛な動物には思えませんでした。
結局、昼食は港から車で数分の位置にある食堂でいただきました。
テレビがついていて、沖縄の番組が放送されていました。民謡の歌詞の意味も分からなかったし、それを説明する司会者の言葉もまた全然理解できません。
でもそれがとても清々しい印象を与えてくれました。いろんな地域があって、独特の言葉や文化があるっていうのはとても面白いことですし、それを大切にしていることが伝わってきて、日本に沖縄があって本当に良かったと思えました。

違いを認め合うことが国際社会を生きていく上で重要だとよく言われることですが、均質性ばかりが重要視されてきた日本の中で、沖縄の存在は多方面で参考になる要素がたくさんあると思います。
本土との違いを誇りをもって維持している地域。私が先島諸島に惹かれる理由の一つです。


宮古島に戻ると、土砂降りの雨に見舞われました。どうやら台風19号の影響もあったようです。
「台風19号は今、ルソン島に停滞しているよ」
ルソン島。

ごくごく当たり前に出てきた名前。気象情報一つとっても、東京にいたときと視点が全然変わります。
先島諸島は海を介して東南アジアと交流を深めていた、というのが自然に理解できます。

先島諸島にいると、視野がぐわーっと広がるような気がします。
実際、台湾もルソン島も近いし、自然にその先の島、国々に目が行きます。


うーん、やはり先島諸島への興味は尽きない。
機会を作って、ガンガン訪れるぞ! 
東京に戻るやいなや、次回の旅に胸を膨らませる私でした